ラウル達は廊下に散乱した硝子の破片を踏分けて進んでいた。


どうやらそれは、投石と弓による被害のようだった。


ラウル
「他の者はどうした?」


ラウルの親衛隊とされる近衛兵は全部で5名いた。


近衛兵
「2名は馬の元に向かい、足を確保しております。
また、残りの2名は寄宿舎の兵を率いて、反乱軍に当たっております。」


ラウル
「…そうか。
…ならば私も兵の指揮に向かおう。」


近衛兵の返答にラウルはそう返した。


しかし、近衛兵はその返答に更に言葉を返すのだった。


近衛兵
「なりませぬ!
反乱軍の様子、尋常ではありませぬ!
我らが殿として残りますゆえ、ラウル様はお逃げ下さい!
我らも頃合いを見て離脱しますゆえ。」


ラウルはそんな近衛兵の気迫に気圧された。


しかし、指揮官である以上ラウルは、部下を見捨ててその場を去る訳には行かなかった。


近衛兵
「…ラウル様のお考えも分かります。
しかし、軍勢が余りにも違う以上、ラウル様が出られても戦況はどうにも変わりませぬ。
我らはただ死ぬのではありませぬ…。
見事、貴方の活路を切り開いて見せましょう!」