「頑張るよ。だけど、まずは今回のモデルハウスとのコラボを成功させなきゃな。俺にとっては分身のように大切な商品が、彩実が手掛けたモデルハウスの役に立てるんだ。頑張るしかないだろう?」

照れもせず素直に頑張ると口にする忍に、彩実も大きくうなずいた。

展示場の改修工事に伴うモデルハウスの新築が決まってすぐ担当グループのリーダーに任命された彩実の頭にまず浮かんだのは、小関家具の商品だった。

世間で大人気の商品をモデルハウスで使えば話題になり、展示場の集客につながるという考えももちろんあった。

けれど、それ以上に彩実自身が小関家具の商品の大ファンなのだ。

彩実は是非とも多くのひとに小関家具の商品の良さを知ってもらいたいと思い、忍の学生時代からの友人というコネを最大限に利用してコラボに持ち込んだ。

そのとき、会議室のドアをノックする音が響いた。

「どうぞー」

彩実の声に続いて開いたドアから入ってきたのは、今回一緒にモデルハウスを作り上げてきたチームのメンバーたちだ。

女性が三人と男性ひとり。

たしかに同じチームだが、こんなに大勢でわざわざやってくる作業はなかったはずだと、彩実は首をひねる。

すると、唯一の男性であり、彩実の後輩の庄野が彩実たちの傍らに近づいた。

「お疲れ様です。打ち合わせ中すみません。あの、販促グッズのサンプルが届いたので、彩実さんに確認していただこうと思いまして」

庄野は事務的な口調でそう言って、手際よくグッズを並べていく。

新築されたモデルハウス二棟で来場者に配られるグッズだが、家族づれが多いこともあり子ども向けの画用紙とペンのセットや如月ハウスのCMキャラクターとして大活躍中の「ごきげんお月さまのムーンちゃん」のぬいぐるみや絵本。