千紘さんのありがた~いお話

 結局、式は、急いでいたこともあって、ありきたりな感じに普通の式場で普通に終わり。

 住まいも狭い町なので、あまり選ぶ余地もなく、あっさり決まり。

 仕事で忙しかったせいもあり、新生活の準備も母に、
「私がやっとくからっ」
と言われ、自分では選べなかった。

 さあ、なにもかも整ってるから、式に出て、ドレス着て。

 二次会があるから、買っといたワンピースに着替えてっ。

 旅行に行く暇はないから、またあとで。

 さあ、赴任地に行ってっ。

 という怒涛の展開だった。

 そんな感じで新生活が始まってしまったので、千紘は、なにか叶えてやらねばと思って、海に連れてきてくれたのだろうか。

 そんなことを考えながら、いい感じに鄙びた町を歩く。

 そして、ちょっと訊いてみた。

「なんで私だったんですか?」

 千紘が見下ろす。