千紘さんのありがた~いお話

 真昼に産まれたから、真昼。

 深夜に産まれた兄は、真也(しんや)

 そんな適当な親は、娘を嫁に出すときも適当だった。

『まあ、あんたが見つけて来たとも思えない、いい人ね。
 将来有望な先生らしいし』
と今も母はご機嫌だが。

 見つけてきたのは、おばさんだし。

 将来有望な先生が、地方に飛ばされるかな、と私は思っているのだが……。

 真昼は、チラ、と横を歩く千紘を見上げる。

 この人、教授に媚びを売るとか出来なさそうだからな。

 一年過ぎても帰れなかったら、この契約も延長なのだろうか、と怯える。

 そのとき、ふと、

『どんな夢だ。
 全部叶えてやるから言ってみろ』

 私も結婚には夢があったと言ったとき、千紘がそう言ってくれたことを思い出した。