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家から電車で30分くらいの中高一貫の進学校に通う私と縁。

チャコールカラーのブレザーに男子はタータンチェックのパンツ、女子はスカート。

夏服は女子はセーラー服にターンチェックのスカート。
男子は半袖の袖口にネイビーのラインが入ったホワイトシャツ。

制服もなかなか素敵で気に入っている。


桜が満開になる頃、
私は高校2年生として
縁は高校3年生として今年の春進学した。


「おはよう」
「おはよう~高来くん!」

「おはようございます、高来先輩!」
「うん」

学校に近づくにつれていろんな人から縁が声をかけられる。
後輩もクラスメイトも関係なく
縁の姿を見て声をかける。

縁は人気がある。

外見もよくて、成績もいい。
学年成績優秀者の1位か2位には常に名前を連ねている。
部活でもバスケ部でエース。

そして、そんな容姿と賢さを鼻にかけない性格もあって
女子だけでなく男子にも人気がある。


190センチちかい長身に
武道を習っているせいか
ほどよく筋肉もついていて
癖のない黒い髪形。
ブレザータイプの制服をすこしくずしてシャツの第1ボタンをはずしているけれど
だらしない印象はない。

その横を
152センチあるかないかのちびの私が歩いている。
もっとも私なんて、存在すら消されていると思うけど・・笑


身内という欲目を抜いても
縁は何から何まで完璧なのだ。

言葉こそ少ないけれど
誰にでも優しいし周りを見ている。
気配りも配慮もできる。


そんな縁の妹というだけでも注目を浴びてしまう地味な私。
兄とは対照的なわたし。
見た目も何もかもすべて、ふつう。

みんなが口々に縁の妹でうらやましいという。


人気のある兄の妹。である私がうらやましい・・・といわれるたび
妹でいたくないと思う。

今までも何回も女の子から告白されたりしている。
私もなんどか手紙を渡してと頼まれてたこともある。
引く手数多なのに、縁は
特定の人を作ろうとしない

だから
ずっと縁の隣は私の場所になっている。

このまま・・ずっと私の場所ならいいのに。

「・・・・・・・」
となりで眠そうにあくびをした縁を見上げながらため息をつく。

こんなこと、かなうはずないのに。
こんなこと、願ってはいけないのに。


「どうした?杏?」
私のため息に気が付いた縁が心配そうにのぞき込む。

こういうところ。
こういうとこが・・いつもうれしくて
そして・・・

たまらなく、つらい。




「ううん、大丈夫」

なんで私は縁の妹なんだろう・・。


縁はそんなわたしの気持ちなんて、知らない。