「おはよう!杏。」
「おはよう、お母さん」

リビングに、行くと朝食のいい匂いがした。

お母さんがバタバタと朝食の用意をしながら笑顔で迎えてくれた。



「おはよう、杏ちゃん」
「おはよう。お父さん」
新聞紙を広げてソファに座っていたお父さんも笑顔で迎えてくれる。


「ほら、邪魔。」
こつんと頭を軽くたたかれて、振り向くと縁がリビングに入ってくるところだった。


「ひどい!そういう縁のほうこそ、朝からだらしない」

縁の制服のネクタイが緩んでいるのをそっと直す。
眠そうにして、私が、ネクタイを直すのをおとなしく待っている長身のイケメンは私のお兄ちゃん、高来縁(こうらい えにし)


そして、わたしは妹の高来杏。
すこし癖っ毛で背中まであるロングヘア。
染めなくてももともと栗色のような髪の毛はお気に入り。

「お母さん、今日、オレ、ジャージいるんだけど。」
「えぇ~あさになって言わないでー!」

慌ててお母さんがリビングを出て行った。

縁と二人で朝食が用意されたテーブルに移動する。
「前の日に言わないとだめじゃん」
私の隣に座って朝食を食べ始めた縁は、べーと子供みたいに舌を出した。

「そんなことより、早く食べろよ、杏はとろいんだから」
「む~!!」

ぷいっと横を向いた私に
機嫌なおせよと縁が微笑みながら、
頭をなでなでしてきた。

大きい縁の手が私の頭を優しくなでる。

どきどき・・・
朝からこれは反則だ。

恥ずかしくて縁の顔を見れない私はもぐもぐとパンを食べ始めた。
そんな私の気持ちはお構いなしで
縁はひょうひょうとしている。

どうせ・・・
こんなしぐさで一喜一憂しているは私だけ・・

そう思い知らされるたびため息ついてしまう


「なにため息ついてるんだよ~。時間になるぞ。」
「えっ!!」
「もうタイムアウト~!ほら!行くぞ」
がしっと腕をつかまれた。

「やーん、ちょっとまってよ~」
「遅刻するって」

半分も食べていないトーストをテーブルに置いて
縁と玄関を出た。
お父さんとお母さんがいってらっしゃいと言う声が聞こえた。


これが・・
高来家のいつもの朝の風景。