「でも、ありがとう。」


「あ!う、うん!えーと、柊君…付き合って…くれる?」


「もちろん。よろしくね、前園さん。」


…ごめんね。


「あ、あのね柊君!!わ、私の事…また…、朝陽って、呼んで欲しい…です…。」


少し照れているのかうつむき加減で話す前園さん。


「わかった。朝陽。」


゛朝陽゛と呼ばれた途端ぱっと上を向いた前園さんは、嬉しそうにはにかんでいて、なんだか…可愛いと、思えた。


この時、俺が彼女に抱く感情を適切に表す言葉をこれ以外に知らなかった。


「俺もさ、冬夜って呼んでよ。」


「えっ、あ、はい!精進します…!!!」


「ぷはっ、精進しますって、なにそれ」


「えーと…は、恥ずかしくて…呼べないかも…」


恥ずかしいと言って顔を手で覆う彼女の頭に手を乗せてわしゃわしゃと撫でた。


…可愛い


ちっちゃくて、ふわふわしてて。


真っ直ぐで。


俺には…やっぱり勿体ないな。


「ひ…と、冬夜君?」


「ん?」


「あの、髪の毛、ぐちゃぐちゃになっちゃうよ〜」


「あー、ごめん。」


「へへっ」


ふわりと笑う彼女をなんだか無性に手放したくないと思って、無意識のうちに腕の中に閉じ込めていた。


「ごめん、朝陽、もう少し、このままでいて。」


「うん、いーよ。」


ごめん…ごめんね。多分、俺は君を傷つけることしか…出来ないから…。