怖いとか、酷いとか、そんなものよりも

ただただ、美しいと思った。


彼女はそのまま、月から目を離すと、刀をさやに収め、長い髪を靡かせながら、風のように、去っていった。

その姿に、誰も声をかけられなかった。








「…………………………ねぇ」

葵の声で、はっと我に返る。

「あの子、何者なんだろう」

「……………………あぁ」

「…………なぁ、そいつら、死んでんのか?」

秀一が倒れた人のそばにいき、首に手をやる。

「…………亡くなっていますね。恐らく即死でしょう」

「…………あの子が、やったんだよね……」

「………………だろうな」

そんな仲間の会話の中、ふと倒れた男たちの服に描かれた紋章を見る。マリーゴールド。

「………………秋原組か……」