そして、開いているドアから中を覗くと、そこに居たのは、、、、ナルちゃんだった。

そして、側で聴けば聴くほど伝わってくる。

何かに耐えるような、打ち消そうとしているような、それでいて、辛そうな顔をしてピアノを奏でるナルちゃん。

ナルちゃんのそんな顔は初めてだった。
いつだって無表情で、その綺麗な赤い目は、黒く何も写しはしなかったのに。

今は、苛立ちからか、悲痛に顔を歪めている。

そんなナルちゃんの表情や音に、ナルちゃんってピアノ弾けたるんだ。とか、そういう気持ちは見事に吹き飛ばされた。

そして、曲が終わる。

ガタン

ふと立てた音に、ナルちゃんが俺に気づく。

『…………仁? 』

でもさ、今はそんなことより

「何に苛立ってるの?ナルちゃん」