お見合い相手のお姉さん・・・好きになってもいいですか?


 それから・・・。

 紗良が手術を決意して、葉菜も大喜びしていた。


「お姉ちゃん、お金の事は心配しなくていいよ。お母さんが、お父さんの遺産があったって言ってたの。手術の費用はバッチリあるから」


 と言ってくれた。


 とにかく前向きにならなくてはと、紗良は医師と慎重に相談した。





 手術は問題なくできる、ただ、確率が40%以下なのは変わらない。


 それでも0%ではない。

 確率が少しでもあるなら、賭けてみると紗良は言った。




 

 手術は一ヶ月後に決まった。

 夏の暑いときになりそうだ。



 紗良は手術をきっかけに仕事を辞める事にした。

 手術の後も静養しなくてはならなく、仕事に復帰するのも長期かかりそうな事から退職してゆっくり過ごす事にした。


 結人との結婚事はまだ誰にも口外していない。

 いずれ解る事だとしても、騒がれるのも嫌だと紗良は思った。



 いつもと変わらないように紗良は仕事をしていた。


「望月さん、手伝いますよ」

 向か側に座っている男性社員が、紗良の抱えている仕事を少しだけ持って行ってくれた。


「すみません・・・追いつかなくて・・・」

 紗良が申し訳なさそうに謝ると。

「何を言っているんです? いつも、望月さんは1人で抱え込み過ぎるんですよ。少しは、僕達を頼って下さい。望月さんがしっかり教えてくれた事で、もう、一人前に仕事できるようになったんですよ」

「は・・・はい・・・」

「仕事は1人でしているんじゃありません。みんなで、頑張っているんですから。少しくらい、楽していいんですよ」

 男性社員はとても優しく笑ってくれた。



 紗良は仕事の続きを始めた。


「はい、どうぞ」


 隣の女子社員が、そっと紗良に飴を渡してくれた。


「あ・・・すみません・・・」

 紗良は飴を受け取り、デスクの上に置いた。


「根詰めるより、息抜きですよ。たまには甘い物でも口にして、リラックスすると仕事もはかどりますから」

「有難うございます」
 
「もうすぐ、望月さんとお別れなんで。みんな、寂しがっていますよ。ずっと、支えてくれたから。みんな頑張って来れたんです。いなくなるのは、すごく寂しいです」


 なんで、みんな急に優しくしてくれるのだろう?

 今まで「あのオバサン」って目でしか見ていなかったのに・・・。


 紗良はちょっと戸惑っていた。