しばらくして。


 結人は紗良をギュッと抱きしめていた。


 結人の胸の中で、紗良はそっと涙を流していた。



 こんなの優しくされたのは初めてかもしれない。


 
 紗良は自分の気持ちが抑えられなくなり困惑していた。


「紗良・・・。俺、もう自分の気持ちに嘘はつきたくない。だから、紗良と正式に付き合いたい」

「・・・私・・・」


 話してしまっていいかな? 話してしまうときっと、嫌われる。

 それでも・・・言わない事はもっと苦しいから・・・。


 嫌われても、ここで良い思い出で終れるだから・・・。


 紗良は潤んだ目で結人を見た。


 目と目が合うと、結人は優しく微笑んでくれた。

 その目を見ると、また、紗良の頬に涙が伝った・・・。


「・・・ずっと、誰にも言えなくて。・・・嫌われるが分かっていたから。・・・でも、こんなに人を好きになった事ないから。どうしたらいいのか、自分でも判らなくて・・・。ごめんなさい・・・私・・・病気で、そんなに長く生きていられないから・・・」

 言ってしまった。

 きっと嫌われてしまう・・・。


 紗良はそう思って、ギュッと目をつむった。


 ふわりと、暖かい温もりが紗良を包んだ。

 その温もりは、結人の暖かい腕の中だった。


「やっと、話してくれたんだな。一人ですっと、抱えていて重かっただろう? 」

「・・・はい・・・」

「その荷物、今から俺も一緒に背負うから。もう、重くないだろう? 」

「え? ・・・」


 驚いた目を向ける紗良に、結人は優しく微笑んだ。