見習い夫婦~エリート御曹司と交際0日で妊活はじめます~

こんな調子で今に至るわけだが……ダメだ。振り返ってみても、求婚される理由がまったくわからない。

私は、肌が綺麗だと言われることはあっても特別可愛いわけではなく、素朴な顔立ちだと思う。

ナチュラルボブの髪は、着物を着るときは簡単なヘアアレンジをすることが多いものの、普段はだいぶ手を抜いていて、寝癖を直すだけマシだ。

この通り、可もなく不可もない容姿なので、ひと目惚れされただなんて夢のような話はありえない。なのに求婚されるとは……世にも奇妙な話すぎて怖い。

もしや、私が覚えていないだけで以前にも顔を合わせていたのかも?と思い、私は口の端を引きつらせつつ確認してみる。


「あの……どこかでお会いしたことがありましたっけ?」

「いや、今日が初対面だ」

「ですよね。とすると……ストーカ──」

「笑えない冗談だな」


いたって真面目に思い当たる可能性を口にしている最中、彼は若干眉間にシワを寄せて被せ気味に返してきた。言葉の通りニコリともしない人だし、むしろ威圧感がありすぎて恐縮してしまう。

そちらこそ笑えない冗談を言ってらっしゃるのでは……と内心物申したくなっていると、彼はジャケットの内ポケットからなにかを取り出す。