見習い夫婦~エリート御曹司と交際0日で妊活はじめます~

長めの前髪をセンターパートにした髪型も、この人のように顔面偏差値が高くなければきっと似合わない。外見の雰囲気からも、身のこなしからも気高さが伝わってくるようだ。

目が離せなくなる私に、彼は表情を変えずストレートに問いかけてくる。


「失礼だが、ご結婚やその予定は?」


いきなりナイーブな質問を吹っかけてくるな、と心の中でツッコんだ。なんでこんなことを聞いてくるのだ。

あまり結婚願望がない私は、別に痛くもないけれど、苦笑を漏らして正直に答える。


「残念ながら、そういう相手には巡り会えておりません」

「そうか。なら、私にも君をもらう権利があるな」


……ん? 『君をもらう』?

再び独り言のような言葉が聞こえ、私は頭の中にハテナマークをいくつも浮かべる。

直後、謎のイケメンはまっすぐ私を見つめ、「泰永 希沙さん」と、知らないはずの私の名前を呼んだ。そして──。


「私の妻になっていただけないだろうか。君を娶りたい」


 * * *