見習い夫婦~エリート御曹司と交際0日で妊活はじめます~

「とはいえ、少なくとも今夜どうこうすることはないから安心してくれ。ジャージ姿にはきっと欲情しない」

「んなっ……」


失礼な!と喉元まで出かかったが、よくよく考えればジャージ姿に色気なんてあるわけない。文句を飲み込み、膨れっ面をするに留めた。

ストレートでちょっとひどい婚約者さんは、踵を返してドアのほうへと向かう。

そして「夕飯は外で食べよう。それまで荷物を片づけていてくれ」と、何事もなかったかのような口調で告げ、部屋を出ていった。

ドアが閉まった瞬間、私は脱力する。

まさか、下心なく身体の関係を迫ってくる人がいるとは思わなかった……。もしかしたらこれは、周さんが育ってきた環境がそうさせているのかもしれない。

結婚を義務のように思っていたみたいだし、きっと子作りに関しても同じだったのだろうと想像はつく。

でも、そのためのただのプロセスとして行為に及ぶのは、少々寂しいことじゃないだろうか。

私がモヤモヤしているのはそこだ。やはり愛があってこそ抱き合うものだと思うから。

私は見るともなしにドアを眺めてしばし立ち尽くし、彼に意見するべきか、するとしたらどうやってうまく伝えようかと考えあぐねていた。