見習い夫婦~エリート御曹司と交際0日で妊活はじめます~

急須には、丸く模るゆるやかな流水紋と、その中に赤や橙の紅葉が描かれている。母もお茶が好きで、煎茶道具一式は母からもらったものだ。

上品で可愛いデザインだとしか思っていなかったが、今の彼の言葉で思い出した。煎茶道具と同様、母から譲り受けた着物にも、この紋が描かれていることを。

こんなところに目をつける人は今までにいなかったな。不思議なイケメンだ。

微妙に感心していると、私の答えを聞いた男性は、なにかを納得した様子で「なるほど」と小さく頷く。


「……見つけた」

「え?」


ボソッとこぼされた、よく意味がわからない独り言に首を傾げたとき、彼は背筋を伸ばして顔を上げる。

そうして初めて間近でしっかりと顔を見合わせ、ドキリと心臓が揺れ動いた。

切れ長の瞳にスッと通った鼻筋、薄めで形のいい唇、そして瑠璃色のネクタイが落ち着いたクールな印象を与えている。

とても綺麗な顔立ちなのに、愛想がいいとは言えないせいか、男らしい圧倒的な力強さや凄みを感じる。