見習い夫婦～エリート御曹司と交際0日で妊活はじめます～

でも、ただ私をからかっている可能性のほうが高い気がする。

周さんは威圧的なオーラを出しているだけで、おそらく中身は誠実だ。いきなり関係を持とうとするような横暴な人ではないはず。きっとジョークだよ。

そう思うと気が抜けて、呆れた笑いがこぼれた。


「もう、冗談やめてくださいよ。私は陸が言った通りどこでも寝れる人間ですけど、さすがに愛し合っていない男の人と床を共にするだとか、そんなこと──」


軽い口調で話していたそのとき、急に距離を縮めてきた周さんが手を伸ばし、私の顎をくいっと持ち上げた。

驚いて口をつぐむ私の目に、ふざけた空気などまったく感じない彼の真剣な顔が映る。


「俺は本気だ。愛があってもなくても、希沙が婚約者としてここにいる限り、いずれ俺は君を抱く」


ストレートで大胆な宣言に、心拍の振れ幅が一層大きくなる。

しかし、そこに甘さはあまり感じられない。感じるのは、さっきのは戯言ではないと訴えるような力強さと、そこはかとない冷淡さだ。

まるで、角砂糖をひとつ落としただけの、冷えたブラックコーヒーみたい。