そういえば、前に心晴さんが『面倒くさがりな希沙ちゃんは追うタイプじゃないから、追われるほうが合ってるかもね』と言っていたっけ。
彼の考えがいつまでも変わらないように、飽きられない努力もしなきゃ、と思いながら念を押しておく。
「今の言葉、忘れないでくださいね。いち……周さん」
いずれ私も〝一柳〟になるかもしれないのだから、名前で呼ぶ習慣をつけたほうがいいだろうと、少々ぎこちなく呼び直した。
周さんはこちらを一瞥し、表情を変えずにひとこと呟く。
「悪くないな」
それを聞いて、私はふふっと笑いをこぼした。この人の〝悪くない〟は、きっと褒め言葉だから。
だんだん彼のことが理解できてきて、これからの新生活がちょっぴり楽しみになってきた。
約二時間半のドライブを経て、目黒区にある周さんの自宅に着いた……のだが、目の前にどーんと構えた建物を見た私は、あんぐりと口を開いて固まった。
黒いレンガ造りの、和と洋が調和した質実剛健な豪邸。外観だけでも旧華族というのが納得できるような、身分の高い方々が社交界の場として使っていそうな洋館といった感じだ。
彼の考えがいつまでも変わらないように、飽きられない努力もしなきゃ、と思いながら念を押しておく。
「今の言葉、忘れないでくださいね。いち……周さん」
いずれ私も〝一柳〟になるかもしれないのだから、名前で呼ぶ習慣をつけたほうがいいだろうと、少々ぎこちなく呼び直した。
周さんはこちらを一瞥し、表情を変えずにひとこと呟く。
「悪くないな」
それを聞いて、私はふふっと笑いをこぼした。この人の〝悪くない〟は、きっと褒め言葉だから。
だんだん彼のことが理解できてきて、これからの新生活がちょっぴり楽しみになってきた。
約二時間半のドライブを経て、目黒区にある周さんの自宅に着いた……のだが、目の前にどーんと構えた建物を見た私は、あんぐりと口を開いて固まった。
黒いレンガ造りの、和と洋が調和した質実剛健な豪邸。外観だけでも旧華族というのが納得できるような、身分の高い方々が社交界の場として使っていそうな洋館といった感じだ。



