そうして、ひと通りの作法を終えると、おばあちゃんたちと「今日の病院は混んでたわ〜」だの「漬物が美味しく浸かったのよ〜」だのという、年甲斐のない話に付き合う。お年寄りとの会話もお手の物になってきた。
皆さんが満足した様子で帰っていったら片づけだ。ところが、例の身なりのよさそうな男性だけ、なぜか帰ろうとせずにじっと私を見ている。
どうしたのかとキョトンとした直後、彼はすっと立ち上がり、こちらに向かってくるではないか。
ギョッとして若干身を引く私の目の前にやってきた彼は、まるで物語に登場する王子のように優雅に跪く。そして、煎茶盆の上に置かれた茶器をまじまじと観察し始めた。
「ど、どうかされましたか?」
戸惑いの目で彼の顔を覗き込み、問いかけてみる。彼は茶器から視線を逸らさずに、白い陶器の急須を手で示す。
「この急須は、どこで手に入れた? 紋が美しい」
「あ、えっと……どこで手に入れたのか詳しくはわかりませんが、私は母からもらいました。母は祖母からもらったと聞いています。紋も祖母から受け継いだものだとか」
そこはかとなく色気を感じる低い声で問いかけられ、私はとりあえず答えた。
皆さんが満足した様子で帰っていったら片づけだ。ところが、例の身なりのよさそうな男性だけ、なぜか帰ろうとせずにじっと私を見ている。
どうしたのかとキョトンとした直後、彼はすっと立ち上がり、こちらに向かってくるではないか。
ギョッとして若干身を引く私の目の前にやってきた彼は、まるで物語に登場する王子のように優雅に跪く。そして、煎茶盆の上に置かれた茶器をまじまじと観察し始めた。
「ど、どうかされましたか?」
戸惑いの目で彼の顔を覗き込み、問いかけてみる。彼は茶器から視線を逸らさずに、白い陶器の急須を手で示す。
「この急須は、どこで手に入れた? 紋が美しい」
「あ、えっと……どこで手に入れたのか詳しくはわかりませんが、私は母からもらいました。母は祖母からもらったと聞いています。紋も祖母から受け継いだものだとか」
そこはかとなく色気を感じる低い声で問いかけられ、私はとりあえず答えた。



