そこでイベントやお茶会の講座を開けば、お客様を喜ばせることができ、泰永茶園の宣伝にもなる。外国の方には特に興味を持ってもらえるに違いないし、こちらと一柳さん側の双方のメリットになる、と。

この話に異論はなく、むしろやりがいを感じるので即OKした。家業を助けることに自分も協力でき、しかも趣味を活かせるなんて最高だもの。

それに、やっぱり結婚前のお試しの意味でも同居生活をしておきたい。

もしもこの期間に無理だと感じたら、見切りをつけて構わないと言われている。そうなりたくはないが、入籍するまで時間があると気持ちに余裕を持てるからありがたい。

一柳さんは仕事の件を皆にも伝えた上で、自分の思いを述べる。


『希沙さんの人生を背負う覚悟はできています。しかし、幸せな家庭を築くためにはひとりで頑張っても意味がない。彼女の努力も必要です。それができるかどうか、お互いが伴侶として相応しいかどうかを、一緒に暮らすことで彼女にも見極めてもらいたいのです』


その意見を聞く母の表情は、次第に険しさがなくなってきていた。おそらく、彼がしっかりとした意思を持っていると感じたからなのだろう。

しばし思案したあと、納得したように頷き、『わかりました。希沙もそれを望んでいるのなら』と折れてくれたのだった。