見習い夫婦~エリート御曹司と交際0日で妊活はじめます~

彼がそこまで考えていることに少々驚き、私は目をしばたたかせる。

さっき、『いっそ生涯独身を貫いてやろうかと思っていた』と言っていたよね。私に会って、独身でいる選択をあっさり捨て、慣習まで変えようとしているということは……。


「そんなふうに考えるほど、結婚相手は私がいいんですか?」


湧いてきた素朴な疑問を口にして、すぐにはっとした。

今、うっかり恥ずかしいことを……! しかも、なんかちょっと上から目線じゃない?

内心あたふたするも、一柳さんは特に気にした様子もなく、素直に頷く。


「自分の勘を信じるとそうなる。君となら、飽きずにいられそうだ」


そう言う彼の顔に笑みは浮かんでいないのに、口調が柔らかくなったせいかとても穏やかに見え、それだけのことで胸がときめいた。

そして、いまだに勘を頼りにしているのだと思うと、私のほうが笑ってしまった。昨日は勘だと言われて微妙な気分になったのに、なぜだか今はすんなりと受け止められる。

おそらく、一柳さんの人となりが少しわかって、彼の言葉に嘘や適当さを感じなくなったからなのだろう。