見習い夫婦~エリート御曹司と交際0日で妊活はじめます~

「まず、美しい作法で煎茶を淹れる凛とした姿に魅入った。その印象通り上品な性格なのかと思いきや、畑仕事をする姿は逞しいし、部屋はこの有り様。こんなにめちゃくちゃな女性には今まで会ったことがない」


最初はよかったのにだんだんけなされている気がしてきて、私は口の端を引きつらせた。


「それは、いい意味で受け取っていいものかどうか……」

「一応褒めているつもりだが。君は面白い。興味を引かれてばかりだ」


なんだか研究対象のように思われている感じがするけれど、嫌じゃない。興味を持たれるのは、無関心よりよっぽど嬉しいから。

まあ、まったく面白そうな顔はしていないですが……と心の中で苦笑しつつ、私はまだある懸念すべき問題を指摘する。


「でも、結婚の条件には家柄も重要なんですよね? うちのような一般家庭は論外なんじゃ……」

「そうされてきたな、これまでは。私はそんな慣習に縛られる気はない。華族制度なんてとっくに廃止されているんだから」


難しい問題だろうと思ったものの、一柳さんはたいしたことないといった調子で言い切った。


「これからは自分が選んだ相手と結婚できるよう、周囲に働きかけていくつもりだ。一柳家の血を途絶えさせないことは大事だが、娶る相手の家柄など関係ないだろう。子や孫の世代まで、そんな制限を残すのはくだらない」