ただ、幼い頃に植えつけられたこの悲しい記憶が、今の私の考えに影響を及ぼしているんじゃないかと思う。
「そのせいか、結婚願望があまりないんですよ、私。離婚してからしばらく母子家庭だったから、苦労してきた母も見ているし、自分が結婚したらどうなるのかなって考えるのが怖いというか……」
母は、今の父と出会ってもう一度やり直せたけれど、自分はそうなれる気がしない。とはいえ、絶対結婚しなければいけないわけではないし、独身でいても不幸になるわけじゃない。
別にこのままだっていいじゃないか。私はいつの間にか、そう開き直っていたのだ。
私は一柳さんの手から静かに写真を抜き取ると、それをゴミ箱に放って自嘲気味に微笑む。
「だから、自分の好きなように、自由に生きていくのもいいかなって思って過ごしていたら、だらしない女になっちゃってたんです。一柳さんの妻には、相応しくないと思います」
きっぱりと言い、膝の上に置いた手に視線を落とした。
泰永茶園のためを思うなら、結婚を承諾したほうがいいに決まっている。けれど、自分自身や一柳さんの体裁を考えると、なかなか一歩は踏み出せない。
「そのせいか、結婚願望があまりないんですよ、私。離婚してからしばらく母子家庭だったから、苦労してきた母も見ているし、自分が結婚したらどうなるのかなって考えるのが怖いというか……」
母は、今の父と出会ってもう一度やり直せたけれど、自分はそうなれる気がしない。とはいえ、絶対結婚しなければいけないわけではないし、独身でいても不幸になるわけじゃない。
別にこのままだっていいじゃないか。私はいつの間にか、そう開き直っていたのだ。
私は一柳さんの手から静かに写真を抜き取ると、それをゴミ箱に放って自嘲気味に微笑む。
「だから、自分の好きなように、自由に生きていくのもいいかなって思って過ごしていたら、だらしない女になっちゃってたんです。一柳さんの妻には、相応しくないと思います」
きっぱりと言い、膝の上に置いた手に視線を落とした。
泰永茶園のためを思うなら、結婚を承諾したほうがいいに決まっている。けれど、自分自身や一柳さんの体裁を考えると、なかなか一歩は踏み出せない。



