見習い夫婦~エリート御曹司と交際0日で妊活はじめます~

部屋の汚さに不機嫌になるかと思いきや、やる気を漲らせていらっしゃる……。うっすら感じてはいたが、この人はサディストの分類に入るのでは。

一緒に暮らしたらスパルタ教育をされるのか、と考えて憂鬱になりそうだったとき、一柳さんがぬいぐるみの下に落ちていたなにかに目を留め、おもむろに手を伸ばす。

拾い上げたのは、一枚の古びた写真だ。


「この女の子は君か? 隣にしゃがんでいるのは……泰永さん、ではないな」


その言葉を聞いて、彼が持つ写真を上から覗き込んだ私は目を丸くした。四歳くらいの幼い私と三十代の男性が寄り添っているワンシーンを写したそれは、とっくに捨てたと思っていたものだったから。


「わ、なんでこんなところにあったんだろう」

「この乱雑さならどこになにが落ちていても不思議じゃない」

「うっ」


冷たくも的確なひとことに、ぐうの音も出ない。

私は口の端を引きつらせるも、一柳さんの隣に正座をし、写真に写っている人物について説明する。


「この人は、血の繋がった父です。今の両親はふたりとも再婚なので」


こちらに向けられた一柳さんの瞳は、わずかな驚きを含んでいるように見えた。