見習い夫婦~エリート御曹司と交際0日で妊活はじめます~

「なるほど……激安のディスカウントストアを彷彿とさせる物の多さだな。行ったことはないが」

「行ったことないんですか!?」


そこかよ、と自分にツッコみたくなるような部分に引っかかってしまった。だって、安い量販店に行ったことがないとは、この人は本物のセレブではないか。

いや、驚いている場合じゃない。彼を招き入れるために足元だけでも片づけないと。

先に中へ入り、服やら本やらをひとまずベッドに放り投げて、空けたスペースにクッションを置く。

「すみません、この辺に適当に座ってください」と促すと、一柳さんは大きなクマやゆるキャラのぬいぐるみに囲まれたそこに腰を下ろした。

めちゃくちゃ居心地の悪そうな美顔と、御曹司というスペックがこの空間に不釣り合いすぎて、つい吹き出しそうになる。ぬいぐるみのおかげでちょっと可愛く見えるし。

笑いを堪えてざっと整理している間、彼はぐるりと部屋の中を見回している。


「よくこの雑多な中に埋もれていられるな……。整理整頓の仕方から精神論まで、なかなか教育のし甲斐がありそうだ」


厳しい声色の発言と、無表情にもかかわらずどことなく楽しげにも見える顔が恐ろしくて、私は若干身震いした。