見習い夫婦~エリート御曹司と交際0日で妊活はじめます~

昨日の着物姿とは打って変わった格好に、多少なりとも引かれたかと思ったのに……。都会の人ならなおさら。

キョトンとする私に構わず、一柳さんはぐるりと居間を見回し、とんでもない発言をする。


「ついでに、君の部屋も拝見したいんだが」

「……は!?」


わ、私の部屋!? 誰か来るとは思っていないから、他人を入れられるほど綺麗にしていないって!


「なに言ってるんですか! ダメに決まって──っ」


思わず立ち上がって口応えした途端、鋭さを増した瞳がギロリとこちらを向いた。私はギョッとして口をつぐむ。


「部屋の様子と、そこに住む人の心理状態には繋がりがあると言われている。部屋を見させてもらうのは、君のことを手っ取り早く知るひとつの手段じゃないか? それとも、汚すぎて変な雑菌でもいるのか」

「どうぞお上がりくださいませ」


彼の口調は抑揚がないにもかかわらず有無を言わせない迫力があり、私はあっさりと降伏して頭を下げた。

なんの予告もなく女の部屋に上がるだなんて、無礼極まりないけど逆らえない……! 掃除をしていない部屋を覗かれるって、私にしてみたらムダ毛処理をしていない裸を見られるくらい抵抗があるのに。