見習い夫婦~エリート御曹司と交際0日で妊活はじめます~

藪さんが出張シェフとなって作ってくれた料理をいただきながら、ただ今私の母が自らの家庭環境を打ち明けたところ。

私の両親、特に父は身分の違う相手に緊張気味だったのだが、意外にもこの場が和やかな雰囲気で話しやすかったらしい。

母の事情を聞いた周さんのお義母様は、目を丸くしている。


「希沙さんのお祖母様は三条家だったのですね……驚きました」

「私も、母が周さんのお祖父様と交友関係にあっただなんて、思いもしなかったです」


母もおどけて言い、複雑な関係をふたりして笑い合った。

私も周さんからお祖父様との繋がりを聞いて、かなりびっくりしたのだ。まさか祖母が親友で、あの煎茶道具もお祖父様からのプレゼントだったとは。

最初に彼が女紋を見て反応したのはそのせいだとわかったときはすっきりした。母にもそのことを教えて、『世間は狭いね~』とありきたりな文句を口にして驚き合ったのだった。

しばし笑い合ったあと、お義母様がしんみりした表情で口を開く。


「離婚するほど辛い思いをされたのね。華族出身ではない私も、一柳家の決まり事には圧倒されたし、プレッシャーも相当なものだったのでわかります。幸い周を授かることができて、この人の理解もあったから、なんとかやってこれましたけどね」