見習い夫婦～エリート御曹司と交際0日で妊活はじめます～

「一番奥の窓際の席にいる髪の長い女の人、橘さんの娘さんですよ」

「えっ」


橘さんの娘さん……って、周さんを気に入っていると噂の!?

ギョッとして教えられた席のほうを見やると、とても綺麗なストレートロングの黒髪の女性がいた。目鼻立ちがきりっとしていて、お母様とよく似ている。

橘さんも出勤しているので、時々軽い会話を交わしている場面も見られた。

娘さんは友人らしき女性とふたりでランチを楽しんでいるようだが、なんとも気まずいし胸がざわめく。

ここに来たのは、周さんに会うためじゃないよね……？　幸い、彼は本社に行っていていないけれど。


そわそわしながら仕事を続け、ランチタイムが終了となる五分前となった。徐々にお客様が帰っていき、残るは橘さんの娘さんたちだけ。

ひとまず別のテーブルの片付けをしていたとき、背後から「すみません」と声をかけられた。

振り向けば、いつの間にか席を立っていた娘さんがいる。まさか話しかけられるとは思わず、ギクリとして表情も身体も強張らせてしまう。

彼女は友人の女性に「ごめん、先に行ってて」と声をかけ、再び私に向き直る。