手の平に、とてつもなく小さくて温かいものを握った感触があった。

強く握ったら潰れてしまいそうなそれからは、これまでにないくらいの大きな幸せが私の中に流れ込んでくる。

私の隣にいるのは……周さんだ。珍しく、顔をくしゃっとさせて笑っている。私も彼と同じほうに視線を向けて、同様に破顔した。

小さく、丸みを帯びていて、とてもとても愛らしいそれは、天使と比喩されるのは間違いじゃない──。


ずっと見ていたかったのに、白い明かりに包まれて見えなくなっていく。それと共に、誰かが話す声と機械的な音が響いてきた。

眩しさと騒がしさでやや顔をしかめる。うっすら目を開くと、ぼんやりとした視界に、見慣れない景色とひとりの人物の顔が入り込んだ。


「希沙!」


さっきも聞いた気がする大好きな声に呼ばれ、私を覗き込む人になんとか焦点を合わせる。


「ぁ……ま、ねさ……?」


思うように動かない口で言うと、誰か別の人の声も聞こえてくる。なんと言っているのかよくわからないが、車らしきものに身体が揺られていることを把握しはじめる。

あれ……私、駅にいたはずなのに。