見習い夫婦~エリート御曹司と交際0日で妊活はじめます~

「誰もが急に親になって、強くなれるわけじゃない。妊娠がわかったときとか、出産したときとか、きっと人によってスタートラインが違って、子供が育つのと一緒に親になっていくのよ。だから、希沙も大丈夫」


温かくてとても心強い声に励まされ、私の目からは自然に涙が溢れていた。

重くのしかかっていたものが一気に取り除かれた気分。母から伝わってくる〝焦らなくていいんだよ〟というメッセージが、私が求めていたものだったのかもしれない。

彼女はぽろぽろと涙をこぼす私の頭をそっと撫で、やや眉を下げて問う。


「希沙は、産まれてきたことを後悔してる?」


……後悔、なんて。

私は片親で、順風満帆とは言えない家庭環境だったにもかかわらず、辛い記憶はほとんどない。産まれてから今まで、幸せな人生を送っていると胸を張れる。

それは母からたくさんの愛情をもらって、一生懸命育てる彼女の姿を見ていたから。


「……してない。これっぽっちも」


ぐちゃぐちゃの顔で、声を震わせながらもしっかり答えると、母は安堵と嬉しさが混ざった笑顔で「よかった」と言った。