見習い夫婦~エリート御曹司と交際0日で妊活はじめます~

「そんな気持ち、これっぽっちもないわ。希沙がいたからなんでもできたし、ふたりだけの生活も楽しくて幸せだったわよ。だってあなた、最高に可愛いんだもの」


満面の笑みを浮かべて話す母に、なんだか胸の奥がくすぐったくなる。愛されていることを実感して。

しかし、彼女は少し笑顔を曇らせて、声のトーンを落とす。


「ただ、妊娠中はずっと不安だった。女の子だってわかったらなおさら、この子を愛して幸せにしてあげられるのかって自問自答してたわ。今の希沙みたいに」


母も同じ心境だったとわかり、ドキリとした。

彼女は目を見張る私を安心させるように微笑み、「でもね」と続ける。


「あなたが産まれた瞬間に世界が変わったの。なにがあっても私がこの子を守る、って強く思えた。厳しい環境が待っているのはわかっていたけど、私だけは絶対にこの子を愛せるから大丈夫、って確信できた」


母の強さをひしひしと感じる言葉が、じんわりと胸に染み込む。

母が確固たる自信を持てたのは、私が産まれた瞬間だった。それを知ったら、今臆病になっているのはなにも珍しいことではないし、自分が薄情で悪いわけでもないのだと思わされる。