見習い夫婦～エリート御曹司と交際0日で妊活はじめます～

「男の子を望まれていたのに、産まれてきたのが女の子だったものだから、前のお義母さんに酷く当たられていてね。そのせいで自分が壊れそうだったし、なにより希沙がかわいそうで離婚したの」


それを聞いて、長年頭の中にあった断片的な記憶の謎がようやく解消された。

父方の祖母が、私に対して『どうして産まれてきたのがこの子なんだい』と忌々しそうに口にしていたのは、私が男の子じゃなかったからだったのだ。本当の父が味方してくれなかったのも、これが原因なのだろう。

まさか、母も跡取りのことで辛い思いをしていたなんて……。

今の自分と重なって、胸が締めつけられる。そんなふうになってしまって、産まなければよかったと思ったことはないのだろうか。


「……後悔した？　私を産んだこと」


遠慮がちに、しかしストレートに問いかけてみた。

どんな返答がくるかと、怖くなったのはほんの一瞬。母はぷっと吹き出して、「後悔なんかするわけないじゃない！」と明るく即答したから。

あっけらかんとした彼女に、私は目をぱちくりさせる。