見習い夫婦~エリート御曹司と交際0日で妊活はじめます~

にわかには信じがたくて呆気に取られている間にも、彼は抱きしめる腕の力をやや強くして続ける。


「惹かれてるって気づいてから、君に会うといいイメージがどんどん浮かぶし、イチに嫉妬もしてる。仲よくやれるわけなかったんだよな、恋敵なんだから」


苦笑交じりに本音を吐露され、私は徐々に納得し始める。

富井さんと周さんは今でも顔を合わせれば悪態をつき合っていて、なかなか関係は良好にならないなと思っていたのだが、私が原因だったとは。


「でも、人のものを無理やり奪うほど落ちぶれてはないから、心配しないで。俺が入る余地もないほど、君たちが惚れ込んでいるのもよくわかったし」


ちょっぴり茶化すような口調でそう言った彼は、腕の力を緩めて身体を離した。

それでもまだ腕は掴んだまま、憂いを帯びた笑みを浮かべて私を向き合わせる。


「ただ、仕事にいい影響が出るから、君を想う気持ちはしばらく持っていようと思う。その分、イチとは犬猿の仲でい続けることにもなるけどね」


バツが悪そうに笑う富井さん……ズルいなぁ。仕事のためとなると、諦めてくださいとも言えない。