「俺は、希沙の気持ちが一番大事だと思うよ。家のことは二の次でいいから、自分がどうしたいか、その一柳さんとは一緒に暮らしていけそうなのか、いろんな視点から一度じっくり考えてみたら?」


玄にいはやっぱりうまくまとめてくれるし、なにより私の思いを尊重しようとするところが優しい。私は表情筋を緩めて「うん、そうだね」と頷いた。


「とはいえ、俺も希沙の花嫁姿は見たい」


これで結婚話は終わりになるかと思いきや、玄にいが腕を組んで真面目に願望を口にしたので、父と陸も深く頷いて同意する。


「父さんもだ。想像しただけで涙ちょちょ切れるくらい寂しいがな……」

「俺も見たい。姉ちゃんが角隠しとか、文金高島田とかにしたら絶対コントだもん」


半笑いの弟への報復で、無理やり紹興酒を飲ませようとするも、玄にいに全力で阻止された。私にあの髪型が似合わないであろうことは自分でもわかっているけど、陸に言われると腹立たしい。

でも、こんなふうに私の結婚について話し合うのは初めてだから、新鮮でちょっとむず痒い。ほんの少し、花嫁姿の自分を想像できた気もする。

いつもに増してにぎやかな私たちを、母だけは複雑そうな表情で眺めていた。