見習い夫婦~エリート御曹司と交際0日で妊活はじめます~

「家のこと、これから母に会って聞いてみます。ありがとうございました」


善は急げだと思い、腰を上げようとしたとき、富井さんが手の平をこちらに向けて制す。


「待って。俺も君に見せたいものがある」


あ……そういえば、富井さんも私に用があったんだっけ。いけない、自分のことばかり考えてしまっていた。

反省しつつきちんと座り直すと、クローゼットからなにやら服を取り出している彼が目に入る。


「俺が来てほしかったのは、誰よりも先に、君にこれを見せたかったからだよ」


そう言ってウォールハンガーにかけられた服は、シックな紺色のカシュクールワンピース。

ロング丈で裾がアシンメトリーになっており、襟は着物のように重なっていて、美しい和柄がアクセントになっている。初めて見るデザインだ。

私は自然に立ち上がり、目を輝かせてじっくり眺める。


「わあ……袴と洋服が合わさったみたい! すごくオシャレで素敵ですね」

「これは、希沙ちゃんをイメージして作ったんだ」


思いもよらない言葉に、目を丸くして斜め後ろにいる富井さんを振り返る。「私を?」と確認すれば、彼は優しく微笑んで頷いた。