とにかく、彼女を探さなければ。女紋のことを調べていて自分の家系を知ったとなると、次に向かうであろう場所で思い当たるのは……。


「希沙は実家に帰ったのか?」


母親のもとへ行ったのではないかと予想して尋ねれば、富井は目をしばたたかせ、「勘が冴えてるじゃん」と肯定した。

そうとわかれば、迎えに行くまでだ。このままじっと待っていることはできそうにない。

富井にはお構いなしで、すぐさま部屋をあとにする。急いで店の外へ出たとき、あとを追ってきた富井が、聞き捨てならないひとことを投げてくる。


「あーちなみに、俺が彼女を腕に閉じ込めたのも事実だから。じゃあな」


振り返ってギロリと睨みつければ、彼はしたり顔で微笑み、軽く手を振って扉を閉めた。


「……今度会ったら八つ裂きにしてやる」


暗澹(あんたん)たる声でボソッと呟き、うっすら覚える殺意をなんとか胸に押し留める。

今はそれよりも、最愛の人を取り戻す。いつか彼女に宣言した、『何度逃げても捕まえる』という言葉を忘れてなどいないから。

俺たちは夫婦に、家族になるためにここまでやってきたはずだ。彼女と育んできた想いを、愛を、絶対に無駄にはしない。