見習い夫婦~エリート御曹司と交際0日で妊活はじめます~

俺の様子を見て一瞬固まったふたりは、驚愕と困惑が混ざった表情でコソコソと話しだす。


「社長が恋煩い!?」

「怒ってるようにしか見えないけどな……」


すべて聞こえているが、それにツッコむ気力さえ湧かない。

なんせ数日前、最愛の人にプロポーズを断られているのだ。そのショックよりも、希沙が抱えている不安を取り除いてやれない自分が不甲斐なくて仕方ない。

俺はてっきり、妊娠に至らないことで悩んでいるのかと思っていたが、それ以前の問題だった。子供を幸せにする自信がなくなり始め、子作り自体をためらっているとは。

そのことに気づかされ、どう対処したらいいのかがわからなくなった。

妊娠に対する女性の気持ちは、男が想像するよりずっとデリケートなはずだ。軽はずみな言葉はかけられない。

それに、子供に愛情が湧くかということに対しては、彼女に言った通り、そのときになってみないと俺にもわからない。無責任かもしれないが、それが嘘偽りのない本音だ。

とはいえ、もっと優しい言葉を与えてやるべきだったか……。

昼食を終えてから京都駅へ向かうまでの間も、ぐるぐると考えを巡らせてはため息をつく。そんな俺を、部下たちはやはり怪訝そうに見ていた。