見習い夫婦~エリート御曹司と交際0日で妊活はじめます~

「一柳さんに協力してもらえたら、玄にいと陸の子供や孫の世代まで安泰になるんだろうね。それなら嫁ぐのもアリなのかも……」


そう言った直後、テーブルに漬物を盛った器がゴトリと置かれた。

見上げれば、硬い表情をする母がいる。食後のお茶と晩酌のお供に、漬物やフルーツを用意するのがわが家のお決まりなのだ。

母は私のそばに正座すると、きりりとした顔でまっすぐ見つめてくる。この様子だと、彼女は今回の結婚話をあまりよく思っていないのだろう。


「私は反対よ。茶園の経営が悪化してるわけじゃないんだもの、政略結婚なんてする必要ない。希沙だって、自分が好きになった人と一緒になりたいでしょう?」

「んー……まず結婚願望がないからなぁ」


予想通り反対する母は、私のためを思ってくれているのだと十分わかる。が、そもそも結婚したい欲が人並み以下の私だ。この話を蹴っても、次の相手を見つける努力はしない気がする。

私の気のない返事を聞いた母は、困り顔でため息をついた。一方の陸は、会ったことがないにもかかわらず一柳さん推しらしく、母と私に向けてビシッと言い放つ。