見習い夫婦~エリート御曹司と交際0日で妊活はじめます~

私たちの両親はというと、父は煎茶のことでは妥協しないが、普段はどちらかというと能天気なタイプ。母のほうがしっかりしていて、子供のように叱られているところもたまに見る。

そんな父は、なぜか肩を落として晩酌のビールを手酌でグラスに注ぎ、しんみりとした口調で言う。


「希沙が結婚か……まだまだ先だと思ってたのに……」

「お父さん、勝手に決めない」


父の中ではすでに私が結婚を了承したことになっているらしいので、端的に諭しておいた。

きっと父は、私が結婚をすることにしてもしなくても、なにも文句は言わないだろう。私の意思を最優先して、〝好きなようにやりなさい〟と言う人だから。

温めた紹興酒に口をつけて考えていると、玄にいが急須に茶葉を入れながら問いかける。


「その一柳さんは信頼できそうな人なのか?」


私は目線を宙にさ迷わせ、昼間のやりとりと彼の姿を思い返す。

突然求婚してくるってどんだけヤバい人なんだ、と最初は思ったけれど、強引に連れて行くようなことはしなかったな。一応私のことも知ろうとしているみたいだったし。