見習い夫婦~エリート御曹司と交際0日で妊活はじめます~

先輩ママさんである心晴さんの体験談を聞くだけでも、参考になったし励まされた。

そうして翌週、煎茶道教室を開く日がやってきた。周さんの計らいで予約を受けつけ、月に数回のペースで行っている。

最初は数人しか集まらなかったが、今では先着順で十数人の制限を設けるくらい認知されるようになった。皆で和やかに歓談しながらお茶をいただくこの教室が、私のひとつの楽しみでもある。

夏本番の今は、着物ではなく浴衣を着て行っている。涼しげな水色の浴衣を纏って茶室で準備をしていると、早くもお客様がやってきた。

一番乗りのその人は、青と黒の独特な染め模様がオシャレな浴衣を着た富井さん。

本当に来た! 一応予約を入れておいてよかった……と内心ホッとして、「富井さん、こんにちは」と笑顔で会釈した。

彼は浴衣もとてもよく似合っていてカッコいいのだが、今日も表情は浮かない。そして、やっぱりのっそりとした動きで私に接近してくる。


「あのさぁ、希沙ちゃん……」

「は、はい?」

「この間希沙ちゃんたちに会ってから、なぜかいいアイデアが浮かばなくなって、今や完全なスランプなんだよ……。この原因は絶対君たちにあると思うんだよね……」