見習い夫婦~エリート御曹司と交際0日で妊活はじめます~

あ、周さん……平和的に、かつ圧をかけて黙らせてしまうとは、さすがです!

頼もしい彼に、感服した眼差しを向ける。

私と目を合わせた彼は一瞬、ふ、と不敵に微笑んだ。〝気にするな〟というように。

胸がきゅっと締めつけられる。彼が笑ったからというだけではなくて、私が嫌な思いをしていることを察して助けてくれるところも嬉しくて。

この人が旦那様になったら怖いものはないかも、なんて大袈裟なことまで思ってしまい、私も笑みがこぼれた。


見た目も味も抜群なフレンチのコース料理をいただいたあとは、世界も認めるピアニストの演奏を堪能した。

正直、これまでクラシックの音楽には興味がなく、こういう場に来てまで聞こうと思わなかったのだが、生演奏を聞いたらその迫力に圧倒され、心地よいメロディーに癒された。

ショーは午後九時半頃に終了。耳から栄養を取ったような、満たされた気分で会場を出るため歩いていると、周さんが話しかけてくる。


「つまらなくなかったか?」

「全然! 来てよかったです。耳とお腹が喜んでますよ~」

「頭の悪そうな感想だ……」


いまだうっとりする私に、彼は容赦なく毒を吐いた。しかし、おかしそうな表情をしているから、きっと茶化しているのだろう。