見習い夫婦~エリート御曹司と交際0日で妊活はじめます~

そうなんだ、富井さんのほうから……。なんとなく、周さんを心底嫌っているような感じでもなさそうだったけれど。

一体どうして犬猿の仲になってしまったんだろう。周さんに心当たりがないなら、私が考えても到底わかりはしないが気になる。


「富井が生み出す奇抜なデザインの服を見ていても思うが、あいつの考えていることはよくわからない。才能がある人間には変わり者が多いからな」


気だるげな調子で言う彼は、富井さんに才能があることは認めているらしい。

考えていることがわからない点では周さんも一緒ですよ……と密かに思っていると、私を見下ろす鋭い眼差しに捉えられる。


「女遊びが激しいという噂もある。君も知り合いになった以上、誘われないように気をつけてくれ」


確かに、富井さんも絶対モテるだろう。とはいえ、私は周さんの婚約者だと宣言したのだから誘われるとは思えないが、彼がとても真剣なので「はい」と頷いておいた。


それから、大きな円卓がずらりと並ぶきらびやかな会場内へ入り、席へ向かうまでの間に、周さんとビジネス関係にある方々がいらっしゃるので挨拶をしている。

今目の前にいるのは、おそらく五十代後半だがスタイルのいい、ダンディなおじ様だ。