見習い夫婦~エリート御曹司と交際0日で妊活はじめます~

「顔?」

「仮面をつけているわけじゃないんだから、本当の君だろ」


……ああ、なるほど。そんなふうには考えられなかった。

斜め上の発言に妙に感心したとき、一柳さんは訝しげな目をして言う。


「君は、私のことを知る前に、自分をもう一度見つめ直したほうがいいんじゃないのか」


そっけないひとことが放たれ、私の眉がぴくりと反応する。

それって、〝自分を磨け〟って意味? そりゃあ私は女として低レベルだけど、初対面のあなたにそこまで言われる必要がありますかね?

勝手に求婚してきてダメ出しするとは……無性に腹が立ってきたぞ。

ひとつ息を吸い込み、〝あなたねぇ〟と物申そうとした、そのときだ。彼の冷たくも綺麗な瞳が、私をまっすぐ捉える。


「鏡をよく見てみたらどうだ。『可愛げがない』と言ったが、私の目には十分可愛く映っている」


──完全に不意を衝く言葉に、キュン、と心臓が鳴いた。息を吸い込んだ状態で、一旦呼吸が止まる。

え……ええ? 今しがたの発言はそういう意味? 『可愛く映っている』だなんて、元カレにすら言われたことはないんですが。