見習い夫婦~エリート御曹司と交際0日で妊活はじめます~

〝琴瑟相和す〟の言葉もお祖父様から聞いたらしいし、きっと周さんにとってかけがえのない、大きな影響力を持つ存在だったのだろう。

そんなお祖父様と私が同じ流派だったなんて、素敵な偶然もあるものだ。


「周さんとの繋がりが見つかって嬉しい。これでさらに近づけた気がします」


口元を緩ませて、素直な気持ちを口にした。干物女とはいえ、こういう運命的なものにはキュンとするのだ。

そのとき、ふいに周さんの足が止まる。キョトンとする私に、彼は涼しげな顔で淡泊な言葉を投げる。


「そんな、目に見えないものばかりでは心許ないだろう」

「う……」


そ、そうかもしれないけれど、胸のときめきを消すようなことを言わないでくださいよ。

若干口を尖らせたのもつかの間、彼がスラックスのポケットからなにかを取り出すので、無意識にそこに注目する。

現れたものは、白くて丸みを帯びた小さな箱。上品な形のそれの正体を、瞬時に予想して目を見張る。


「形のあるものも必要じゃないか? これで、少しは君の婚約者としての自信を強くさせられるといいんだが」


そう言って距離を詰めた彼は、私の右手を取って小箱をそっと持たせた。

これ、見覚えがある。ドラマや映画で。でも、まさか──。