見習い夫婦~エリート御曹司と交際0日で妊活はじめます~

私はまったく英語が聞き取れないのでキョトンとしていると、周さんが通訳してくれる。


「イギリスでも緑茶は人気だが、圧倒的に茶の湯が有名で煎茶道を知らない人が多い。こんなに素晴らしい点前があるのだということを広めていきたいそうだ。それと、泰永茶園の茶も」


とてもありがたい言葉をいただけて、心の中に花が開いたかのごとく喜びが広がる。

私は満面の笑みで「ありがとうございます!」と言い、丁寧に頭を下げた。


それから、茶園のことを教えたり、イギリスでの緑茶の嗜み方を聞いたりして、有意義な時間を過ごした。

静岡ではお茶でうがいをするだとか、給食にお茶が出るだとか、地元の話も興味津々で聞いてくれていた。

そうして無事トレヴァーさん御一行をお見送りして、ようやく一段落ついた私と周さんは、遅い昼食をいただいたあと旧一柳邸の中庭で休憩している。

気温はやや暑いが、日本庭園の緑や池が涼しさを感じさせる。着物を裾を乱さず、小股でゆっくり歩く私に歩調を合わせている周さんが、改めてお礼を言う。


「今日は本当にありがとう。とても喜ばれていたよ」

「いえ。むしろ泰永のお茶まで購入してくださって、私のほうが感謝しています」