見習い夫婦~エリート御曹司と交際0日で妊活はじめます~

ちょうどランチが終了した今、食堂の中は静かで、給仕係の皆も速やかに後片づけを済ませている。橘さんたちは、六人掛けのテーブルに座る私たちをチラチラと見ていた。

私の向かい側にトレヴァーさんたちが、隣には周さんが座っている。通訳は周さんにお願いして、私は思うままに話すことにした。


「私が所属する流派は、悠久流と言います。この流派のモットーは、〝茶を気軽に楽しみ、笑顔の源とすること〟。礼儀作法よりも、美味しいお茶と会話を楽しむほうが重要だとされています」


それを訳す周さんに、興味津々に耳を傾ける彼らを見ながら、私は自分が口にした言葉で再確認していた。

そうだ……私は、皆で楽しいひとときを過ごすためのひとつの方法として煎茶道を学び、披露してきた。

それはなにも間違っていないし、目の前にいる相手に喜びを感じてもらえたらそれでいいのだ。

悠久流を名乗れる自分に誇りを持とう、と思い直すことができ、気分も笑顔も明るくなる。


「人と人が繋がるのに、国や人種……家系なんかは関係ありませんよね。今日は私のお点前と泰永茶園の煎茶で、皆様を笑顔にしたいと思っています」