見習い夫婦~エリート御曹司と交際0日で妊活はじめます~

周さんが煎茶道に詳しいことはわかっていたけれど、まさか悠久流まで知っているとは。それだけじゃなく、私の作法が正確であったらしいことも驚きだ。

彼は凛とした瞳で私を見つめ、しっかりとした口調で告げる。


「だから、自信を持って披露するといい。それに、洋室で椅子に座って行う立礼(りゅうれい)も、海外の人にはとても喜ばれる。できるな?」


周さんの言葉たちに救われ、みるみる自信とやる気が戻ってくる。橘さんのことなど気にならなくなるほど。

テーブルでの作法も、もちろんできる。彼のお墨つきがもらえたのは、やはり心強い。

私は背筋をシャンと伸ばし、「はい。お任せください」と力強く答えた。


トレヴァーさんと婚約者、そして付き人らしき男性は、藪さんが作った和洋折衷な創作料理をコースでいただいていて、とても満足した様子だった。

ゆっくりと食事を終えたあとは、周さんがトレヴァーさんの足を気遣いつつ、二階の資料館へと案内していった。大正時代の文化と、一柳家の歴史について詳しく説明したことだろう。

その間、私は食堂の奥まった席に煎茶道具を一式用意していた。準備万端のそこへトレヴァーさん御一行が戻ってくると、私はひとつ息を吸い、丁寧なお辞儀でお迎えした。