「資料館は二階ですが、見学はどうなさるんです?」
「階段は松葉杖を使って上がると」
そうか、ここはエレベーターがあるわけではないから大変だよね。
周さんが答えるのを聞いて小さく頷いていると、橘さんは整った眉を下げ、とても無念そうに言う。
「さすがに茶室に座るのは無理ですよね。残念ですね、お点前をお見せできなくて」
先ほどの言い方からして、きっと残念だとは思っていないだろう彼女の白々しさに悔しさが湧いてくる。が、今はそれ以上に気持ちが落ちてしまってなにも言い返せない。
ぐっと手を握り、俯いたときだった。
「いや、茶室でなくとも煎茶道は行える。そうだろう? 希沙」
周さんの冷静な声が響き、橘さんはキョトンとする。私は当然そのことは知っているので、顔を上げて「はい」と答えた。
橘さんは茶室でなければいけないと思い込んでいたようだが、彼の言う通り、煎茶道は現代の生活に即してテーブルでも行うことができる。
煎茶を淹れる本来の目的は相手と交流を深めるためのものなので、どの種類のお茶を淹れてもいいし、比較的自由なのだ。
しかし、茶室であれテーブルであれ、私のような半端者が本当に行ってもいいのだろうか。
「階段は松葉杖を使って上がると」
そうか、ここはエレベーターがあるわけではないから大変だよね。
周さんが答えるのを聞いて小さく頷いていると、橘さんは整った眉を下げ、とても無念そうに言う。
「さすがに茶室に座るのは無理ですよね。残念ですね、お点前をお見せできなくて」
先ほどの言い方からして、きっと残念だとは思っていないだろう彼女の白々しさに悔しさが湧いてくる。が、今はそれ以上に気持ちが落ちてしまってなにも言い返せない。
ぐっと手を握り、俯いたときだった。
「いや、茶室でなくとも煎茶道は行える。そうだろう? 希沙」
周さんの冷静な声が響き、橘さんはキョトンとする。私は当然そのことは知っているので、顔を上げて「はい」と答えた。
橘さんは茶室でなければいけないと思い込んでいたようだが、彼の言う通り、煎茶道は現代の生活に即してテーブルでも行うことができる。
煎茶を淹れる本来の目的は相手と交流を深めるためのものなので、どの種類のお茶を淹れてもいいし、比較的自由なのだ。
しかし、茶室であれテーブルであれ、私のような半端者が本当に行ってもいいのだろうか。



