前向きに考えて、辻が花の柄が華やかな薄桜色の着物を羽織る。上品な色合いでどのシーンでも着やすく、とても重宝しているものだ。
さあ着るぞ、と衿先を揃えていると、ふいに橘さんが話しかけてくる。美魔女と言っていいだろうその顔に笑みはない。
「ずいぶんと立派な着物を持っていらっしゃるのね」
「祖母の代から受け継いでいる大切なものなんです。ここぞという日に着ることにしていて」
素直に答えると、橘さんは品定めするような目をして軽く頷いた。その後ろで、おば様ふたりがコソコソと……いや、確実に私に聞こえるくらいの声で話している。
「こういうのなんて言ったかしら」
「猫に小判、豚に真珠、馬の耳に念仏」
「それそれ」
おほほっと笑う彼女たちが癪に障り、笑顔は崩さないもののピクリと眉を上げてしまった。
言ってくれるじゃないの。こうもはっきり罵られると逆に清々しい気もする……けど、やっぱり怒りのメーターは若干上がる。
「そもそもひとりで着付けられるの?」
「手伝ってもらうつもりかもしれないけど、私らも忙しいからねぇ」
橘さん以外のふたりが嫌味っぽく気にかけてくれているみたいだけれど、心配ご無用! 見くびってもらっちゃ困りますよ。
さあ着るぞ、と衿先を揃えていると、ふいに橘さんが話しかけてくる。美魔女と言っていいだろうその顔に笑みはない。
「ずいぶんと立派な着物を持っていらっしゃるのね」
「祖母の代から受け継いでいる大切なものなんです。ここぞという日に着ることにしていて」
素直に答えると、橘さんは品定めするような目をして軽く頷いた。その後ろで、おば様ふたりがコソコソと……いや、確実に私に聞こえるくらいの声で話している。
「こういうのなんて言ったかしら」
「猫に小判、豚に真珠、馬の耳に念仏」
「それそれ」
おほほっと笑う彼女たちが癪に障り、笑顔は崩さないもののピクリと眉を上げてしまった。
言ってくれるじゃないの。こうもはっきり罵られると逆に清々しい気もする……けど、やっぱり怒りのメーターは若干上がる。
「そもそもひとりで着付けられるの?」
「手伝ってもらうつもりかもしれないけど、私らも忙しいからねぇ」
橘さん以外のふたりが嫌味っぽく気にかけてくれているみたいだけれど、心配ご無用! 見くびってもらっちゃ困りますよ。



