私は、大学を卒業し、社会人になった。

やっていけるか不安だったが、同期は皆明る

く楽しく過ごしていた。

仕事中は真面目に取り組み、休憩中は笑いの

渦が起こる。

楽しすぎて、あの日の事を思い出さなくなっ

ていった。

このまま、忘れてしまいたい…。

君の名前、顔、声、全てを…。

そうすれば、きっとまた前を向けるはずだか

ら。

「じゃあーね!亜紀!」

「うん!またねー!」

私は、同期の子に手を振りながら静かな夜道

を一人歩いた。

一人でいると、風が冷たく感じた。

脳を思考停止させるかのような、冷たさが頭

を刺激する。

「今日も、楽しかったな。」

私は、そう呟くと瞳からジワリも涙が溢れて

いた。

「あー。やっぱり、まだ駄目かぁ…。」

私は、瞳を隠すように腕を上げ必死に涙を流

さないようにした。

君のいない世界は、冷たく息が詰まりそうだ

った。

いや、そんな世界で息などしたくない…。

大好き、大好きだったのに…。

あれから、何年経ったのかな…?

数えるのも馬鹿馬鹿しくなっていった私は、

あの日から君の事を忘れようと努力した。

だが、そんなの口先だけだったのかもしれな

い…。

君に貰ったネックレス、一緒に撮った写真、

君に貰った花束の花をしおりにしたやつ。

全てが、捨てきれてなかった。

「好きでいる事が、こんなに辛い事なん

だ…。」

きっと、私はこの気持ちを永遠に捨てきれな

いだろう。

だって、君への愛を受け取ってしまったのだ

から…。