「糸羽ちゃん」

名前を呼ばれて、ハッとした。


「って、呼んでもいい?」


何も悟られたくなくて、思考を読み取られたくなくて、必死に今自分が作るべき表情を探す。


「……う、うん」


わたし今うまく笑えてる…?
自然な表情できてるんだろうか。

なんだかもう、頭の中がいっぱいになって2人のことばかりが気になって仕方ない。



「じゃあ、わたしのことは加奈って呼んで?
よかったらこれからも仲良くしようね?」


それから連絡先を交換した。

そのあともいろいろ話をしたけれど、正直あまり内容が頭に入ってこなかった。

そして、内心ヒヤヒヤしてた。

もしかしたら、会話の中で世唯くんの名前が出てくるかもしれないって…。


深く考えすぎかもしれない……なんて自分を言い聞かせるようにした。


そして、会話の流れから加奈ちゃんが文化祭当日、わたしの学校にやって来ることが決まってしまった。